やきものをファッション感覚的にとらえて制作している若い陶芸家が多いなかで、今泉毅さんは、たんにそれのみを追い掛けることなく、しっかりと自分というものを持っている数少ない陶芸家の一人である。
　日本陶芸展におけるグランプリ受賞が彼の存在を知らしめることとなったが、その後、一過性に終わらないのは、日ごろの探求心が常に新鮮な雰囲気をつくり出しているらであり、そのことが現在の揺るぎない確固たる存在に結び付いているといえるだろう。
　素材である土と釉薬の、そのどちらも大切にしながら自身の形を考える作陶のスタルは、今泉さん独特であると同時に、新しい世代のこだわりの姿なのかもしれない。
　器という造形を、いまの今泉さんは、どう考え、そして、どう捉えているのか、今回の個展は、その一端を示してくれることと思う。
　こだわり抜いて、でもちょっと空回りしている、そんな姿を想像しながら、会場の器の一つ一つを手にとって観て欲しい。そして、どんな些細なことでも、今泉さんに問いかけて欲しい。目をキラキラと輝かせて、自身の作品である黒彩、白瓷、青瓷などについて語ってくれることだろう。
　今後の展開を視野に入れつつ、まずは今回の個展の器を楽しみにしたい。　　　　　　　　　　　　　

東京国立近代美術館 工芸課長　唐 澤 昌 宏