本間幸夫さんは塗の人間国宝であった赤地友哉先生の門下で私と同門であり、もう二十数年来のお付き合いだ。本間さんの仕事は椀などの食器を中心として花器や茶器、家具などと幅が広い。
誠実な漆工の気質を貫きながら立派な漆芸工房をかまえ、着実に本間漆器のファンを全国に増やしている。脱帽せざるを得ないことは、自らが茨城県の奥久慈に土地を求めて漆の苗木を植樹し、その漆液を用いて製作をしていることである。またそのことをＮＰＯ団体として立ち上げ「壱木呂の会」を組織し、本当に良質な日本漆を製産することにも大変な情熱を傾けておられる。
私もその会に入らせて頂いているが、その漆膜の堅牢さと、そこから発せられる漆の気の強さにはそのたびに感銘を覚える。同じ日本産漆でも育て方により品質に大きな違いがあるのだ。
実に羨ましいことが、もうひとつある。それは御長男の重隆さんが片腕となって漆工房を守り、御次男の健司さんが漆の山を守りながら木地となる挽物に専念されていることである。御一家、力を合わせての本間工房が、両足をしっかりと地につけた作品を世に送り出すことにより、日常の生活を通じて、ひとりでも多くの方々に本来の漆器の良さをわかって頂けたら嬉しいと思うのである。

漆芸作家 池田 巌

昭和15年東京生まれ
東京藝術大学漆芸科卒
「茶の漆芸 棗」 淡交社ほか著書多数

■略歴
昭和22年　　東京生まれ。
昭和42年　　立教大学を中退し木工芸彫刻家 故柴﨑 始に師事。
昭和57年　　人間国宝・故赤地友哉に師事する。
昭和63年　　「荻窪銀花」にて、個展活動を始める。
平成 2 年　　日本橋三越本店にて「木汁居漆芸展」三人展・以降4回開催
平成 4 年　　茨城県那珂郡山方町に自らの漆林を造成する。
平成 7 年　　日本橋三越本店、美術サロンにて個展
平成 8 年　　新宿伊勢丹本店にて個展。以降、定期的に開催
　　　　　　秋田「小松クラフトスペース」にて個展・以降、定期的に開催
平成12年　　日本橋三越本店美術特選画廊にて個展・以降、定期的に開催　
　　　　　　 茨城県山方町に漆液と木工轆轤の為の仕事場を新設。
平成13年　　阪急梅田本店、美術画廊にて個展。工芸ギャラリー「瑞玉」にて個展
平成16年　　日本橋三越本店工芸サロンにて個展。その他、個展多数
現在、日本産漆を支援する「壱木呂の会」代表　奥久慈漆生産組合顧問
日経ＢＰ社「技のココロ」下記サイトで本間幸夫の制作と理念を御覧頂けます。
http://techon.nikkeibp.co.jp/column/wazanokokoro/