唐津焼十二人展 ー茶懐石の器ー
朝鮮唐津四方手付鉢 / 岡本作礼作
会期 Schedule |
平成28年2月23日(火)~2月29日(月) February 23 - February 29, 2016 |
開廊時間 Opening Hours | 午前11時~午後7時まで(最終日は午後5時まで) 会期中無休 |
出品作家 Artist | 故 吉野 魁、岡本 作礼、梶原 靖元、川上 清美、竹花 正弘、田中 佐次郎、中里 太亀、十四代 中里 太郎右衛門、藤ノ木 土平、村山 健太郎、安永 頼山、矢野 直人 (五十音順) |
ご紹介文 Introduction |
「唐津焼十二人展 -茶懐石の器-」に寄せて 柿傳ギャラリーでの唐津焼作家展も、今回で第4回を迎えます。 今回のテーマは「茶懐石の器」です。これは、一昨年の展覧会の折に決まったテーマです。 唐津焼は人気が高く、若い作家の頑張りもあって順調のようですが、そうした現況に甘んじることなく、もう一段高みを目指そうということで、このテーマが決まりました。 昨年、あるコレクターのお宅で古唐津の向付を拝見させていただきました。それは、器胎が薄く繊細な作振りの器でした。 そうした作振りは、陶片では実見していましたが、やはり実物を拝見すると、唐津といっても決して一つではなく、素朴な日常の器から繊細な茶懐石の器まで幅広く作られていたことが分ります。 日本のやきものの中で、唐津の存在は他のやきものとは違うように思います。それは、朝鮮のやきものが磁器を目指していたように、唐津焼の原料である砂岩が磁土に近い存在だからです。 唐津焼に使われる土は一種類ではありませんが、桃山唐津の魅力はなんといっても素材である土にあると思います。 その土が朝鮮の白磁鉱石に近い存在だからこそ、肌がよく焼き締まり、使えば使うほど味わいが増すのではないかと思います。 唐津焼の魅力は、原料である土と真摯に向かい合うことによって生まれてきます。その姿勢は現代の唐津焼作家にも受け継がれています。 岡本作礼氏は、これまでの唐津にはない、織部焼の型起こしによる技法を取り入れたシャープな<朝鮮唐津四方手付鉢>を出品されました。白い藁灰釉と黒釉を左右に掛け分け、力強い竹節の把っ手が付く、四方脚付の鉢です。古唐津という基本を学ばれたゆえに到達した自由な発想から生まれたものです。 梶原靖元氏は、これまで唐津の砂岩を用いて焼成した「梶原唐津」の名で知られてきましたが、今回ははじめて天目釉に挑戦されました。この<天目釉向付>の原料も唐津の砂岩です。梶原氏は、唐津の天然素材を用いて新しい可能性に挑戦されています。 川上清美氏は、「美濃焼の美を日光と捉えるならば、李朝の美は月光ではないだろうか。その二つの美が融合しているのが唐津だ。」といわれます。この発言は言得て妙です。川上氏の<井戸茶碗>は、まさに陰と陽、やさしさと力強さが融合する茶碗です。 竹花正弘氏の<斑唐津茶碗>は、木目の細かい土味と柔らかな釉味が特徴です。竹花氏は、作品から作為を極限まで削り、いかに自然に見せるかという作為のない古格を目指しています。 田中佐次郎氏は、唐津の山瀬窯と韓半島蔚山の亀山窯という二つの国に窯を築き、これまで八百十数回を超す窯焚きを積み重ねてきました。<絵唐津盃><玄黄盃><雲彩盃>の3点は、そうした炎との戦いから生まれた作品であり、「過現未一如」の境地から生まれたものです。 中里太亀氏の<唐津南蛮割山椒向附>は、茶懐石で使われる折敷の寸法に合わせて作られた向附です。南蛮は、父・隆氏が種子島へ渡り焼締陶を試みたことに始まりますが、食通として知られる隆氏だけに、太亀氏の向附は料理を盛って映える器です。 十四代中里太郎右衛門氏の<斑唐津向付>は、白い釉肌の美しい割山椒型の向付です。茶懐石の器としてはやや小振りですが、とても可愛らしい向付です。「自分が信じて作りたいと思ったものを、この唐津の土地で唐津の素材で創り上げていきたい。」という想いが込められています。 藤ノ木土平氏の<絵唐津食籠>は型起こしによる蓋物です。藤ノ木氏は、この技術を美濃で修得されたようです。鉄分の多い頁岩によって暖かみのある土味を醸し出し、長石釉を柄杓掛けして、わずかに梅花皮が生じています。 村山健太郎氏の<黄唐津茶碗>は土物の質感がよく現れた作品で、1280度程の焼成でよく焼き締まっています。村山氏は、この鉄分を多く含んだ黄褐色の土味が好きだといいます。茶の緑にも映えそうな平茶碗です。 安永頼山氏は、新作茶 を<翠明茶 >と名付けられました。朝鮮系の磁土に近い土を用いて1300度で焼成したものです。薄緑に発色した中に、わずかに薄黄の釉が流れて、やさしい景色を呈しています。 矢野直人氏の<李朝堅手徳利>は白い陶石系の砂岩を用いて、古唐津の源流である李朝に挑戦、一方<斑唐津ぐい吞>は粒子の粗い吉野谷砂岩を用いての作品です。また、昨年の秋から暮れにかけて連房式から割竹式の窯に作り替えた新窯作品も出品されます。 吉野 魁氏は、もっとも早く砂岩を用いて桃山唐津の再現に挑戦した陶芸家です。この<本手絵唐津四方平向付>も古唐津の基本に沿って制作されています。昨年の十一月に亡くなられましたが、本年3月13日から19日まで柿傳ギャラリーで吉野 魁・敬子親子展が開催されます。 森 孝一 (美術評論家・日本陶磁協会 常任理事) |
略歴 Biography | □岡本 作礼 昭和33年 唐津に生まれる 昭和54年 唐津焼窯元にて修行 平成元年 現在地に窯を築く 平成11年 能登島ガラス工房にてパート・ド・ヴエールの技法を習得 平成14年 銀座黒田陶苑にて個展 その後毎年新作を発表する 新しい表現方法を求めて九州陶磁器文化会館にてフランス人陶芸家と日仏現代陶芸展を開催する 平成15年 東京都庭園美術館にて現代日本の陶芸『受容と発信』に出品する 平成20年 京都「野村美術館」にて個展 □梶原 靖元 昭和37年 伊万里市南波多に生まれる 昭和55年 有田工業高等学校 デザイン科卒 唐津焼窯元 太閤三ノ丸窯に弟子入 昭和元年 大丸北峰氏に師事し煎茶道具を習う 平成15年 8月~11月 韓国にて海外研修 平成17年 9月 NHK BS2「侘びの茶碗をよみがえらせたい」放映 平成19年 6月 NHK教育「美の壺」出演 □川上 清美 昭和23年 長崎県対馬市に生まれる 昭和54年~ 瀬戸、唐津、備前、再び唐津にて修業 昭和63年 唐津市半田にて独立 平成2 年~ 各地百貨店、ギャラリーにて個展開催 □竹花 正弘 昭和49年 東京都に生まれる 平成12年 唐津のあや窯で三年間修行 平成15年 厳木町に割竹式登窯を築く 平成16年 初窯焚き □田中 佐次郎 昭和12年 福岡県に生まれる 昭和40年 縄文・弥生土器を研究、手びねりを始める 昭和46年 肥前唐津古窯址を発掘調査、作陶活動を開始する 昭和50年 唐津に登窯を築窯する 平成16年 韓国に登窯を築窯 □中里 太亀 昭和40年 唐津に生まれる 昭和63年 父・中里隆のもとでやきものを始める 平成5 年 柿傳ギャラリーにて、中里隆・奥三十郎、三人展出品 平成6 年 万葉洞みゆき店にて、父子展出品 □十四代 中里 太郎右衛門 昭和32年 十三代 中里太郎右衛門の長男に生まれる 昭和59年 第16回日展にて叩き青唐津手付壺「貝緑」初入選 平成14年 国際陶芸アカデミー(I・A・C)の会員となる 十四代 中里太郎右衛門を襲名する 平成17年 第52回日本伝統工芸展にて「唐津井戸茶碗」入選 以後、平成22年まで6回入選 平成18年 10月、天皇・皇后両陛下の佐賀県行幸啓に際し、国史跡に指定された唐人町御茶碗窯および工房の御視察賜り、御説明の栄誉を受ける。 「叩き朝鮮唐津壺」佐賀県より両陛下へ献上 平成19年 日本工芸会正会員となる 平成22年 佐賀県陶芸協会の副会長に就任 平成23年 唐津市政功労者表彰を受ける、紺綬褒章受章 □藤ノ木 土平 昭和24年 新潟県に生まれる 昭和50年 唐津 大橋裕氏に師事 昭和53年 美濃 加藤芳右衛門に師事 昭和55年 鎮西町に土平窯を開窯 □村山 健太郎 昭和53年 唐津市に生まれる 平成15年 有田窯業大学校卒業 川上清美氏に師事 平成20年 唐津市に築窯、独立 □安永 頼山 昭和45年 島根県益田市に生まれる 平成13年 田中佐次郎氏のもと二年修業 平成15年 藤ノ木土平氏のもと三年修業 平成20年 登り窯を築窯 平成25年 田中佐次郎氏命名の頼山に改名 □矢野 直人 昭和51年 唐津市に生まれる 平成6 年 五年間アメリカ留学 平成14年 佐賀県立有田窯業大学校卒業 平成15年 佐賀県立有田窯業大学校嘱託講師 平成16年 自宅 殿山窯にて作陶始める 平成20年 韓国 蔚山にて六ヶ月作陶 □吉野 魁 昭和16年 伊万里市に生まれる 昭和45年 四連房の登り窯を築き作陶を始める 以来「古唐津」の持つ風合いに惹かれ、土と釉と窯火の研究に取り組む 平成15年 『炎色野』初個展 平成25年 「魁(かい)」と改名する 平成27年 鬼籍に入る |
作家在廊日 Date Artist in Gallery | 23(火) 梶原靖元、田中佐次郎、十四代 中里太郎右衛門、村山 健太郎、安永 頼山、矢野 直人、吉野敬子 24(水) 村山 健太郎、安永 頼山、吉野敬子 26(金) 岡本作礼 27(土) 岡本作礼、藤ノ木土平 28(日) 岡本作礼 29(月) 岡本作礼 |
お知らせ Notice | ■オープニング レセプション パーティー 本展覧会の初日に、展覧会会場にて、ささやかなパーティー(立食)を開催します。 京懐石「柿傳」のおつまみと日本酒をふるまいますので、どうぞお気軽にご参会ください。 ・日時 2月23日(火) 17:00 ~19 :00 ・場所 柿傳ギャラリー ・申込 不要 ■■特別記念茶会 柿傳ギャラリーの上にある柿傳茶室にて、特別記念茶会を開催致します。 茶会に参加された事がない初心の方も大歓迎ですので、どうぞお気軽に、唐津ゆかりのお道具で、一服のお茶をお楽しみ頂ければ幸いです。 ・日時 2月28日(日) 10:00、11:00、13:00席入の三席 ・場所 新宿 京懐石 柿傳(東京都新宿区新宿3-37-11 安与ビル) 薄茶席「残月(9階)」、点心席「古今サロン(6 階) 」、受付・寄付「安与ホール( 7階)」 ※席入15 分前までにお集まりください。 ・席主 出品作家の一人である 岡本 作礼 氏 ・会費 5,000 円(税込) ・所用時間 2時間弱程度 ・申込 参加ご希望の方は、柿傳ギャラリーまで電話、FAX、メールにてお申し込みください。(TEL 03-3352-5118、FAX 03-5269-0335、gallery@kakiden.com。電話は11 時~19 時受付。ギャラリー休廊日を除く) ■■■同時開催コラボレーション展 「唐津・有田 春の器展/GALERIE AZUR(渋谷セルリアンタワー)」 本展覧会の同時開催コラボレーション展として、東京・渋谷の「GALERIE AZUR」 さんで「唐津・有田 春の器展」が開催されます。 「GALERIE AZUR」さんは、渋谷西口のランドマークであるセルリアンタワー東急ホテル1階にある素敵なギャラリーです。 今回の「唐津・有田 春の器展」でも魅力的な器がたくさん展観される事でしょう。 是非、渋谷まで足をのばして頂ければ幸いです。 ・会期 2月23日(火)〜29日(月) 11:00〜18:00 (不定休) ・会場 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル1F GALERIE AZUR(ぎゃるり あじゅーる) ・企画 GALLERY一番館 TEL&FAX:03-6427-0029 e-mail:info@1bankan.com |
主な出品作品 Main Exhibited Works |
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No.5
作家名 | 田中 佐次郎 |
作品名 | 〔右〕 絵唐津盃 〔中央〕 雲彩盃 〔左〕 玄黄盃 |
価格 | 〔右〕 86,400 〔中央〕 86,400【ご売約済】 〔左〕 86,400 |
寸法 | 〔右〕 φ 8.2 × H 6.0 (㎝) 〔中央〕 φ8.3 × H5.1 (cm) 〔左〕 φ7.2 × H6.7 (㎝) |
No.11
作家名 | 矢野 直人 |
作品名 | 〔右〕 李朝堅手徳利 〔左〕 斑唐津ぐい呑 |
価格 | 〔右〕 19,440 〔左〕 8,640 【ご売約済】 |
寸法 | 〔右〕 φ9.4 × H13.6 (㎝) 〔左〕 φ 6.7×H 5.1 (㎝) |
販売方法につきまして
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- DMや当サイトに掲載している作品は、会期が始まる前の事前予約を承っております。
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- 実際に弊廊にお出かけ頂けない方には、お電話やメールでのご注文も喜んで承ります。
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- 皆様からのお問い合わせを心よりお待ち申し上げております。